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 とボーンは自嘲気味に言い、それから

 とボーンは自嘲気味に言い、それから

 とボーンは自嘲気味に言い、それから、
「ハンベエ宛に、手紙を言付かっている。」
 と懐から封書を出してハンベエに手渡した。
 ハンベエは封書を開いて目を通すと、
「ボーンも見るか。」
 と尋ねた。
「何が書いてあるのだ。」
「今後のゴロデリア王国の治世について留意すべき事だな。王位には王女が就くのが今日の時の流れに適っている事。太子については命を奪わず、出来るだけ名誉を重んじて欲しい旨。その後、ゴロデリア王国の今後の体制。処罰すべき対象等々だ。結構物騒な事も書かれている。」
「ふーん、それを閣下はハンベエに託された訳か。見込まれたものだな。中身は見ずに置こう。閣下がハンベエに託されたのだ。」
「そうかあ。まあ、ここから先はボーンと一蓮托生のつもりだからどっちでも良いがな。」
 とハンベエは拘るところ無く言った。
「一蓮托生と来たか。俺の方は全て終わるまで敵の旗は降ろさないよ。それで、何から話そうか。」
「そうだな。太子の命だが、前々からの言の通り我が方は奪うつもりはない。太子の命を救う事は王女のたっての願いであり、当方にそれに異を唱える者は居ない。仮に居たら、俺が片付ける。」
「閣下の読み通りであり、願いの通りだな。勿論、俺にも異議は無い。」
「そっちには跳ねっ返りは居ないのかい?」
「それは分からない。何しろ今残っているのは、太子に最期までついて行こうという忠義者ばかりだからな。講和と言っても、はいそうですかと受け容れられるかどうかは分からん。」
「まあ、そうだろうな。和平に先立ち、王女は太子と面会して二人切りで話す事を望んでいる。あれやこれやぶちまけたい胸の内が有るようだ。その上で、講和という段取りだ。」
 ふむ、とボーンは肯いた。ハンベエから視線を外して、雲に眼を遣った。何か計算しているような雰囲気だ。
「で、どうやって二人を面会させる。」
 ややあって、ボーンがハンベエに尋ねた。
「今二万五千の歩兵と六百弱の騎兵を引き連れて来ている。この兵をボルマンスク宮殿附近に配置して太子の軍と対峙した後、俺と王女の二人だけでボルマンスク宮殿に乗り込む。会見する部屋等の手配は任せたい。会見は王女と太子二人きり、余人を交えぬという事で。」(サイレント・キッチンの公然部隊が一千五百、非公然部隊が一千五百。これは俺の意のままに動かせるだろう。万一の事が起きても王女を守り切れる。)
 とボーンは胸の内で素速く算盤を弾いた。
「良かろう。王女殿下の身の安全は請け合おう。」
「うん、任せた。それでだ、その前にボルマンスクの一般兵士達に和平の機運を煽って置いて欲しい。内部調略はお手の物だろう。」
 とハンベエは付け足した。
「講和に持って行くのだから、当然だな。任せてもらおう。」
「それから、王女と太子の面会の時だがな。・・・・・・。」
 とハンベエはボーンに顔を寄せて小声で何事か囁いた。
「偉く、細かい頼み事だな。相変わらず、小細工の多いハンベエだ。」
「ここまで苦心惨憺して来たんだ。最後の最後で、どっちかに何か有ったら全て水の泡だ。小細工でも何でもするさ。協力してくれよ。」
「分かった。まず、ボルマンスク兵士達への内部調略が功を奏した時点で連絡をする。それまで待っていてくれ。それではいずれ又。」
 とボーンは踵を返して立ち去ろうとした。