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 急に笑い出すと

 急に笑い出すと

 急に笑い出すと、皆がそれにつられて大笑いする。

「違げぇねぇ! おう酒を用意するんだ、今夜は飲むぞ!」

 こうなれば皆がいきいきとして準備を始める。いつの時代も、どこの男達も、こうやって酒を飲んでくだらない話をするのが大好きなもんだな。ただ……男達の俺をみる目つきに熱がありすぎて落ち着かなかった。

 山賊たちと飲めや歌えやと宴会をすると、audit servicesいつしか一人また一人とどこかへ消えて行った。「小便だ」と言って焚き火がある場所から離れると、木の幹に背を預けて空を眺める。

「クソッタレな世の中でも、星の輝きは何年経っても変わらんな」 もう体感で十年以上あいつらと離れてるが、どこかで元気にしているんだろうか。そこでは俺が消えたことになっているのか、それとも居なかったことになってるのか……考えても仕方ないな。サクッサクッと草を踏む足音が聞こえて来た。

「島殿、戻られないのですか」

「荀彧か、騒ぎたい気分じゃなくなってね」

 目の前の地べたに座り、姿勢を正す。表情は月明かりでははっきりと見えないが、ポーカーフェイスといえばこいつだ。

「正直なところ驚きました。日頃より戦闘はそこまで好まれないと聞いていたので、典偉の思い込みかとばかり」

「本音さ。俺はどうやっても勝てない相手を知っているからな、そいつが居るからこそこうも言うんだよ」

 なあ兄弟、次があったらもう勝てる気がしない。そんな弱気を吐いても、どうでしょうなあ、とか言って笑うんだろうがね。

「文若見るところに、飛将と同格とすら思えますが」

「なんだその飛将ってのは、誰かの名前か?」

 飛車だったら将棋の大駒なんだが、そういう姓のやつがいるのか。

「飛将とは今より数百年前の漢の将軍に御座います。その武勇極めて優れており、匈奴相手に幾度も大勝利を収めた英雄に御座います」

「そんな凄い奴と比べたらバチがあたるぞ。俺はただの放浪者だよ」荀彧はまだ若い、色んな奴をみたら基準が変動する。そうだな黄巾賊の乱といえばあいつか「呂布ってのが居る、そいつが国士無双だろ」

「なんと、島殿はよくぞ併州の呂布をご存知で。主簿であるのに武術に優れ、烏丸や鮮卑との戦では無敵と評されている武人。どこでそのような噂を?」 はははははは、あいつはまだ世に出てなかったか! うん、このあたり色々荀彧に相談だな。

「どこぞの賊が言ってたのを覚えていただけさ。ところで曹操、孫堅、劉備という奴らをどう思う?」

 まずは根っこの確認をしよう、そうしよう。孫堅はこの前一緒だったな、にしてもどうして従軍してたんだ、そういうのも含めえてこいつとは話足りてないな。

「曹操殿はかの大司農曹嵩殿の息子、此度潁川方面での活躍で済南の相に任じられた優駿。軍事の才があり、任地での評判も良く、良人でありましょう」

「俺も優秀だと思うよ、桁違いだ。ことが大きくなればなるほどに、才能を発揮するタイプだろうな」

 という答えを知っているわけだが、序盤どうしていたのか俺にはさっぱりだよ。董卓と戦うあたりでは負けが込んでいたような気がする。

「流石の見立てで御座います。孫堅殿は当代の英雄、勇猛果敢で腕が立ち、文民には恩徳を与える統治者でもあります。より高みを目指し、無茶をする気があるのが見受けられます」

「太く短く、前へより前へ進もうとする姿勢は大層好感が持てる。それだけにどこかで不幸に見舞われるんだろうが、本人はそれを本望だと言うだろうな」

 グダグダ愚痴っている姿が想像出来んぞ、ダメだと解っても無駄な悪あがきをせずに、綺麗に逝くんだろうな。俺も男としてそうでありたい。

「お好きなのですね、彼のお方が」

「そうだな、男が惚れる男はいるもんだよ」

「清廉な人物ですので、大成することを祈りましょう。さて最後に劉備殿ですが、寡聞にして耳にしませんが」

「そうか、ならいいさ」